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オンライン辞書,Dictionary


No.14
作文
2022-04-19
出身: 日本語以外
居住: 台灣
 
ログイン名: 作文書けん
タイトル:既成概念に囚われやすい敬語の使い方
      私が言葉遣いに困った経験は職場にいた時、目上の人に対する敬語のさじ加減がわからなかったことだ。日本育ちではない私はただ「失礼にならないよう、上司には敬語を使うべき」という漠然とした印象を持っていた。ある日、ラーメン屋で働く機会に恵まれ、私は大阪人の店長と一緒に働くことになった。

    店長は「けんと」という名前だった。仕事の初日に、業務内容を紹介された時から敬語はもちろん、「けんとさん」と呼ぶことも心掛けした。だが、次の日には「僕のことはけんちゃんと呼んでくれていいよ」と言われ、私は困り果てた。普通、上司をあだ名で呼ぶことは許されないでしょう。店長の押しに負け、私はけんさんと提案した。が、「けんちゃんで呼びなさい」と可愛らしく怒られたので、最終的に妥協したのだった。

    あだ名で呼ぶことになっても、敬語は変わらず使っていた。一度気になって店長に聞くと、「外国人が敬語に慣れないなら使わなくても気にしない」と教えてくれた。私が困りつつけんちゃんと呼ぶと、嬉しそうな笑顔で返されたその時、大多数のルールでも当てにならない時はあるのだと実感した。

    日本の職場は特に礼儀に厳しいと聞いたが、外国の文化に触れたらそれが変わるかもしれないし、この上司は単に人懐こいだけかもしれない。媒体を通して文化を知ることはできても、それが必ずしも正しいとは言い切れない。正解はないのかもしれない、なぜなら、敬語の正しい使い方は相手を理解する上で双方の合意のもとに形を成すものだと私は思ったのだった。
 
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